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3分間コーチ (コーチトゥエンティワン/伊藤守)


「こいつ何でこんなに物分りが悪いんだ(怒)!!」
ビジネスの現場でそう思ったことは皆さんも一度や二度ではないでしょう。
最近だといつそう感じたでしょうか。


この考えが頭をもたげると、
イライラして相手の話や悩みを聞けず、
途中で会話を遮ってついこちらから結論を提示して話をまとめてしまいます。


自分的にはすっきりなのですが、
相手はそれで納得するでしょうか?


コーチングというと、「相手を伸ばす力」というイメージが真っ先に湧きます。
しかしその本質は、「自分が伸びる力」というのが私の今の解釈です。


これから以下の立ち読みのポイントで解説していく事柄は、
仕事場でのコミュニケーションの作法であって、
すべて自分を見直すことから始まります。


実際のコーチングプログラムは高額な上に定期的な時間を取られるので、
一般の人にはかなりハードルが高い世界です。
まずは著者が推奨する「3分間コーチ」から始めてみませんか。


──────────────────────────────────────
■本書の構成


第1章:1回3分間の時間を取るメリット
第2章:声をかける/かけられるタイミング
第3章:部下に話をさせる方法
第4章:行動を促す目標の与え方
第5章:コーチ型マネージャーが留意すること


──────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント


⇒41ページ【 3分間の量 】


私たちは仕事が緊密化してくると、要領のいいコミュニケーションを取ろうとします。
それはロジカルに要点をまとめ、
"必要な時に"相手に聞きに行くという行動になって表れます。
コミュニケーションの"質"の部分の重視です。


筆者が言う3分間コーチとは、
まず部下について考える時間を自分の中で設け、
そして1日3分でよいから考えた内容について実際部下と話す時間を取りなさい、
というものです。


私はずっと「(コミュニケーションとは、)質が高ければいいだろう」
と思い込んできましたが、そのことに限界を感じるようにもなりました。


コミュニケーションの質のみが高い人は、
頼りになる反面、冷たい感じ、
もっと言うと聞きたいことを気軽には聞けない関係にあるのです。


そうすると、昔自分が否定していた
コミュニケーションは質より量という考え方が適正なような気がしてなりません。


◇◆◇3分間コーチの本質◇◆◇
1)部下について考える時間をあえて取る
2)部下と会話する時間をあえて取る
⇒継続したコミュニケーションの総量が付き合いの本質に影響を及ぼす


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⇒100ページ【 具体的な声のかけてもらい方 】


私が会社で情報をリリースする立場柄、
会社情報以外にも自分で拾ってきた営業情報をリリースすることがあります。


その時に必ず疑問に思うのが、
「なぜ皆情報を取りに来ないのか」ということ。
せっかく有用な情報をリリースしても、そこにアクセスしてくる人はごく一部なのです。
…もったいないですね。


しかしマネジメントの本質は"自分を疑うこと"です。
何が自分に不足しているのか?


3分間コーチでは、部下の側からも話してもらわなければなりません。
見えないアラートを日々未然にキャッチしていくのです。
筆者は、情報を発信するとき、声をかけてもらいやすくなるよう、
次のような考えを実践するよう紹介しています。


◇◆◇具体的な声のかけてもらい方◇◆◇
×   漠然とした依頼
・「何かあったら声をかけてくれ」
・「いつでも相談してくれ」
○ 具体的な依頼
・「プレゼンの前、企画書を書く前、営業のあと…」
・「キャリアについて話したいとき、頭の整理をしたいとき…」


大事なのは、具体的な困りそうな場面を思い浮かべること。
私に不足していたのは、情報そのもののアクセスについて話すだけでなく、
他にどんなときに対応可能か伝えることでした。


以降は情報をリリースする際、
自分の得意分野が何なのかを含めて発信するようにしています。


----------------------------------------------------------------------------
⇒124〜128ページ【 黙っていることにも理由がある 】


会議やミーティングをしていると、
どうしても話を振る人(=たいていリーダー)が流れの組み立てだけでなく、
意見出しまで行わなくはいけない状況によく陥ります。


そんなときは、「こいつら〜」と思うわけですが、
冷静に考えてみると、参加するメンバーにも様々な事情があります。
知識が無い・遠慮がある・考えをまとめきれない・眠い・関心が無いなど
人それぞれ条件が違います。


本書によれば、「黙っている事実」を責めるのではなく、
どうしたら本人がしゃべりだすか、しゃべりたくなるか、
それを考えるのがリーダーの役割だと述べられています。


私たちはつい、その場で成果を出すことに気を奪われますが、
リーダーこそ時間をかけて話し合う仕組みをつくることを
考える必要がありそうです。


◇◆◇黙っている事象の背景◇◆◇
・ひとりひとりの理由を知る
・話し出せる条件(環境)をつくる


----------------------------------------------------------------------------
⇒149ページ【 ビジョンのつくり方 】


ホテルの社内研修で、GM(ゼネラルマネージャー)がスタッフひとりひとりに、
「どんなサービスをしてみたいか」を問いて回った例が紹介されています。
GMは結局「答え」を説明しません。…手抜きではありません(笑)


この前段で、ビジョンの多くは始めから存在しているものだが、
ひとりひとりが自分なりに理解することで
パフォーマンスが最大化されるということが示されます。


このGMがやりたかったことは、
自分がビジョンそのものについて語ることではなく、
スタッフにビジョンについて考える時間を与えることでした。


筆者はこれを「問いの共有」というナレッジでまとめています。
問いが共有されることで、ひとりひとりがその問いについて考え、
組織全体でその問いについて答えを見つけようとする"環境"が生まれるということです。


◇◆◇ビジョンのつくり方◆◇
・一方的に見せても部下は動かない
・問いを共有することで鮮明になる


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(3)★★★

 
コーチングというとボリューミーな本を想定しますが、
「3分間」というキャッチによって、「簡単にできそう」な気がしてきます。
本書も厚さの割に内容は平易です。
サブタイトルの「ひとりでも部下がいる人のための〜」も
ひじょうに具体的な使い方だなと思いました。


ナレッジ(4)★★★★


言っていることはとてもシンプル。
でも実践するヒントを得られます。


スキーム(2)★★


3分間コーチ自体が複雑なものを目指していないので、
前後に伏線を張ってという込んだ構成にはなっていません。


総合(3)★★★


リーダー・マネージャー必読です。
読みやすいところがポイントなので、
周りにマネジメント(正確にはリーダーシップ分野)に悩んでいる人がいれば、
本の内容を共有してみるのもいいかもしれません。

 

| 人材マネジメント(採用・研修・転職・モチベーション) | 21:56 | comments(34) | - |pookmark
問合せに悩む会社のためのFAQサイト作成&活用ガイド (オウケイウェイブ/兼元謙任・高橋伸之)
評価:
(株)オウケイウェイヴ 兼元 謙任,高橋 伸之
翔泳社
¥ 2,100
(2008-12-16)


WEB2.0になって、「ただサイトがあるだけ」では
評価されない時代になりました。


サイト運用者としてどこを広げるか?と考えたときに、
いまホットなのがFAQ(よくある質問)です。


「教えてgoo」や「Yahoo知恵袋」などのFAQサイトが活用されるように、
自分に合った情報を求めるユーザー対応が
WEB戦略の中でも守りの要になってきました。


そんな期待にこたえるかのように発行された本書。
FAQの元祖ポータルサイトである
オウケイウェイブの代表を著者に迎えてのFAQ本です。


──────────────────────────────────────
■本書の構成


Chapter1:FAQを仕組み化するメリット
Chapter2:FAQが果たす役割
Chapter3:FAQコンテンツ策定/作成プロセス
Chapter4:FAQがもたらす副次的な効果
Chapter5:サイトタイプ別活用事例
付録  :FAQコンテンツ策定/作成シート


──────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント


⇒89〜90ページ【 ユーザー視点のFAQ設計 】


サイトを設計する際には、どうしても開発サイドの視点が入ります。
たとえば求人サイトのコンテンツを考える際に、
「MR転職について」や「アルバイト・バイトについて」のように、
不自然な表記になっているケースが多く見受けられます。
これはSEO上キーワードを盛り込むことが有効だったりして、
開発側の事情で設計された要素です。


本書は、FAQのコンテンツライティングにおいて、
次のようなつくり方をすべきと推奨しています。


◇ユーザー視点の表現
●やりたいことで探す場合
〜したい
〜することはできますか
●困っている内容で探す場合
〜できない
〜はどうしたらよいでしょうか


言われてみれば当たり前なのですが、
言われてみないと気づかないものです。


----------------------------------------------------------------------------
⇒99ページ【 FAQの構成要素 】


サイトを初めて立ち上げる場合、
FAQの要件定義を考える必要があります。


本書では以下の通り構成要素を取り上げ、
代表的なつくり方を示しています。


◇FAQの構成要素
・件名
・質問本文
・回答本文
・参考ページURL
・アンケート機能
・関連する項目


----------------------------------------------------------------------------
⇒152ページ【 FAQの機能 】


WEB以前にリアルの世界でFAQの要素は重視されてきました。
お客様の声としてコールセンターで吸い上げ、
商品開発・営業・その他の用途に活かされてきました。


本書ではWEB上のFAQの機能を以下のように
まとめています。


◇FAQの機能
1)インフォメーション
2)テクニカルサポート
3)トラブルシューティング


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(3)★★★


FAQについて単独でまとめた本自体が少ないというか
ほとんど見かけないので、タイトルに「FAQ」ともってくるだけでも
インパクト十分です。
また、タイトルの枕に「問合せに悩む会社のための」と付け、
ターゲットであるサイト担当者にとってのメリットをしっかりと提示しています。
基本原則に従ったお手本のようなタイトルですね。
装丁もタイトル文字を囲むようにでっかくQで括られて、
とても目立つデザインです。


ナレッジ(1)★


肝心のナレッジは無いに等しいです。
せっかく登場する活用事例も守秘義務のせいかサイト名は伏せられていて
なんだか説得力を欠きます。


スキーム(1)★


序盤で提示されるメリット(=問合せが減る)はほぼ周知の事実で、
少しでもサイト業務に関わっていれば何をいまさらという感じがします。
Chapter5(サイトタイプ別活用事例)を最初に置いて、
そこからメリットをまとめ直す方がよりきれいな構成になりそうです。
また、本書の肝であるChapter3が長いため、
制作と運用にパート分けするともっと読みやすかったのではという印象です。


総合(1)★


2千円という値段を考えると、
本当にこの本が必要な立場に当てはまったとしてもかなり迷った方がいい内容です。
損はしないものの本棚で"魔除け"に終わってしまう可能性大です。

 

| ネットビジネス(業界・起業家・ウェブマーケティング) | 22:10 | comments(0) | - |pookmark
宣伝費をネット広報にまわせ (時事通信/湯川鶴章・ニューズツーユー/神原弥奈子・ネットイヤーグループ/石黒不二代ほか)

評価:
濱田 逸郎,神原 弥奈子,鈴村 賢治,石黒 不二代,湯川 鶴章
時事通信出版局
¥ 1,785
(2008-12-24)
 


いわゆるポータルサイトでは、運営費を賄うために広告費が必要です。
旅行サイトなら旅行会社、不動産サイトなら不動産会社というように
営業の方が頑張る世界です。


このBtoBサイトの広告営業で何が一番難しいかと言われたら、
おそらくお客さんから口をついて出る「で、ネットって効果あるの?」
という意識を変えていくことです。


効果が無いものにカネは払えないという経営の視点はもちろん大事。
しかし、私たちはまだまだWEBの魅力をお客さんにアピール
できていないのでは?とふと反省してしまいます。


ではどのように伝えればお客さんの理解が進むのか?
そのヒントが詰まった1冊をご紹介しましょう。


章ごとに執筆者が違うため良し悪しはありますが、
営業・営業企画・マーケティング・広報・宣伝の方はいっそ買っちゃってください(^ ^;)


──────────────────────────────────────
■本書の構成


第1章:オンラインメディアが広報業務に与えた影響【総論】(濱田逸郎)
第2章:ニュースリリースを軸としたネットPRの概念(神原弥奈子)
第3章:テキストマイニングのWEBへの役立て方(鈴村賢治)
第4章:オンラインメディアがマーケティングにもたらした変容(石黒不二代)
第5章:広報担当者の広がる役割【総論】(湯川鶴章)


──────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント


⇒59ページ【 ケンコーコムのニュースリリースの工夫 】神原さん


経営者の方の中には売り上げに直結しない業務を嫌う方もいます。
だって自分が必死で営業をしているのに、
帰ってきたら部下が机でパソコンとにらっめこ。
ましてやニュースリリースなどせこせこ書いている場合か!と言いたくなるでしょう。


こうした方にはWEB上でニュースリリースを発信する意味を
きっちりと伝えなければいけませんよね。
ここでは健康商品のECサイトであるケンコーコムの広報を事例に、
ニュースリリースの工夫の仕方が取り上げられています。


◇ケンコーコムのニュースリリースの工夫
・月間売れ筋ランキングを発表
 →商品ページへのリンクを設置:誘導効果+被リンク効果


WEBは更新が命!ということで、
ニュースリリースの発信によって更新機会を得るだけでなく、
商品ページへの誘導によるコンバージョン改善や
内部リンクによるページ増、場合によっては外部リンクを得ることで
SEO上非常に意味があることだとわかります。


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⇒60〜65ページ【 ニュースリリースを書く切り口 】神原さん


では、ランキング以外にはどんなニュースリリースの切り口があるのでしょうか。
神原さんが提示する切り口を以下にまとめました。
いずれもネットという媒体と相性がよいことがポイントです。


◇ニュースリリースを書く切り口
1)商品・サービス
  新商品・新サービスの発表
  毎月の販売推移
  導入事例
  機能追加・料金変更等
2)企業動向・業績・IR
  IR情報
3)調査・報告
  自主調査
  ランキング
4)技術・開発
  開発者ブログ
5)告知・募集
  セミナー
6)人事
  採用イベント
  人事ブログ


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⇒45・53・67ページ【 マスメディアとオンラインメディアの違い 】神原さん


既存のマスメディアとオンラインメディアの違いを説明する際、
情報がWEB上にストックされていくことがポイントになりますが、
ここの箇所ではオンラインメディアの特徴を以下のように伝えています。


◇マスメディアとオンラインメディアの違い


●マスメディア(プレスリリース)
 フロー情報性→一過性の瞬発力
 メディアにとって有益な情報に制限
 発行部数や視聴者数といったあいまいな数値が基準


●オンラインメディア(ニュースリリース)
 ストック情報性→長期的に認知機会が増大していく
 ステークホルダーにとって有益な情報を発信→伝播性が高い
 測定可能な指標がある→新機軸の指標の総合的に見ていくべき


---------------------------------------------------------------------------
⇒66ページ【 ネットPRの効果測定指標 】神原さん


前項でネットの効果は多面的・総合的に見ていく必要があると提示されましたが、
その指標はたとえば以下のように示されています。


◇ネットPRの効果測定指標
・検索結果のインデックス数
・検索結果の表示順位と関連サイトの表示数
・自社サイトのページビュー(アクセス数)
・自社サイトを訪れた人数(ユニークユーザー数)
・問合せ数(資料請求数・コンバージョン数・売上)
・各種サイトでのランキング順位(週刊誌・専門誌・格付けサイト)


---------------------------------------------------------------------------
⇒81ページ【 ネットPRの効果測定における価値観 】神原さん


さらに、指標は短期的なものと長期的なものに分かれ、
継続して使うことで見えてくるということです。


◇ネットPRの効果測定における価値観
●短期的な指標:見える効果
・その時々の指標(PV・UU・CVS)
●長期的な指標:見えない効果
・累積する指標(インデックス数・被リンク数・ブログ引用数)
・情報を発信しない、もしくは中断したときには新しいマーケティングデータが入ってこないリスクがある


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⇒128〜129ページ【 マーケティングプロセスが変容したことの意味 】石黒さん


購買プロセスを説明する際によく使われるのが、
「AIDMAからAISASになりました」という公式です。
消費者サイドの視点で捉えると、「ふ〜ん、そうだよね」で終わってしまいそうですが、
企業サイドから捉えると、実は以下のような意味があると解説されています。


◇マーケティングプロセスが変容したことの意味
●AIDMA
 認知段階に莫大な投資
 興味関心段階以降は顧客接点が限定的なため移行しにくかった
●AISAS
 興味・検索・購入・共有の過程が同じネット上で短時間に収束
 個人が検索・比較・共有といった行動を取る


すなわち、私たちがWEBを活かすのは、
興味関心段階以降にいかに迫るかということと同義です。
ここを理解していないと、あるいはお客様に理解してもらわないと、
ただWEBという新しくて安上がりなメディアが出てきたという認識になってしまいます。


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⇒130〜131ページ【 顧客接点の多様化 】石黒さん


さらに、オンラインメディアは企業サイト一発ではなくて、
様々な種類のメディアを使い分けることになります。
各メディアにどんな特徴があるのか、
サイトブランディングに長けたネットイヤーグループでは
ブランドコントロールと消費者への影響を軸に取って、以下の通りまとめています。


◇顧客接点の多様化
                      ブランドコントロール 消費者への影響
自社サイト                 強                       小
メディア一般(※)        中                       中
CGM(ブログ・SNS)     弱                       大


※メディア一般:マス4媒体、情報サイト、比較サイト、検索行動など
※少し意訳していますので、気になる方は直接本を手にとってみてください。
  実際にはもっと精緻なマッピングで紹介されています♪


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(4)★★★★


「(宣伝費をネット広報に)まわせ」は、やや挑発的な表現ですが、
WEBサイト戦略の重要性を理解したい/周りに理解させたい思っている人には、
「ネット広報」の表現がぴたっと刺さります。
この表現は本当にうまいなあと思っていて、
通常この手の本のタイトルとして使われる「WEBマーケティング」や「PR/IR戦略」だと、
どうしても関係者/担当者だけに間口を狭めてしまいます。
「ネット広報」とわかりやすく表現することで、
メインターゲットの広報担当者だけでなく、経営者・サイトマスターをはじめ、
私のような営業(「宣伝費」を「ネット」に奪うという側面で)メインの人間にも
取っ掛かりを与えてくれるタイトルです。


ナレッジ(4)★★★★


インターネットを黎明期から見守り続けてきた方たちの共著だけに、
オンラインメディアがマーケティングに与えた影響・変化について
とても含蓄のある言葉で書かれています。
個人的には第3章のテキストマイニングの解説・活かし方も勉強になりました。
WEB(=オンラインビジネス)って情報が溢れているわりに
なかなか体系化されたナレッジに出会えないので、
本書の価値はすごく貴重だと思います。


スキーム(1)★


各章読みきりになっていて、それぞれ専門的な視点で語られます。
個々の章での話の組み立ては見事なのですが、
あくまで"共著"なので、本書全体としての一体感には欠けます。
総論部分がほんとに総論に留まってしまっている点が残念。
そこが「こんなナレッジありまっせ集」から一歩抜け出ない印象を受ける要因になっています。


総合(3)★★★


広報担当者はもちろん、WEBマーケティングに携わるすべての人が
いま読んでおいて損はない内容です。
書店では常にいい本はないかチェックしていますが、
自分も久しぶりにネット分野の本を読みました。


 

| ネットビジネス(業界・起業家・ウェブマーケティング) | 09:10 | comments(0) | - |pookmark
日本一わかりやすい営業マンの授業 できる上司の仕事の教え方 (セレブリックス・ホールディングス/櫻井富美男)

評価:
櫻井 富美男
中経出版
¥ 1,575
(2008-11-27)
 


スタッフクラスの営業の方に質問です。
これまでビジネスで営業を受ける機会が何回ありましたか?


おそらくあまりないはずです。
営業はかける機会は無数にあっても、
自分が営業を受ける機会はまれです。


なぜか?―理由は、決定権がないから。
AかBかの判断を下すのはマネージャーです。
だから相手もマネージャーを指名します。


営業が伸び悩む原因のひとつに、
"いい営業"を見たことがないという問題があります。


幸い私は若い時に事業企画の仕事に携わることができて、
そこでは求人広告を通して、
営業をすることも営業を受けることもできました。


自分が営業を受けることによって、
こんな営業は絶対にダメだとか、こいつなかなかやるなとか、
相手の営業のレベルがわかるようになってきます。


ですから、営業の研修といえば同行営業やロールプレイが主流ですが、
他社の営業を受けることも研修としておすすめです。


さて、事業企画をしていた当時、たいへん優秀な営業を仕掛けてくる企業がありました。
―リクルートです。他社がろくすっぽ話も聴かずに「(求人)原稿見本です」と
ゲラを渡してくるのに対して、リクルートは徹底的にヒアリングをし、
一緒になって問題点を分析する姿勢を持っていました。


結果的に媒体スペックの都合で話を預けることはなかったのですが、
個人的には発注を預けたいと思ったくらい、営業パーソンとしては優秀でした。


そんなリクルートの出身で、現在は営業のコンサルを手がける
著者が書いたのが今回ご紹介する1冊です。


オビやサブタイトルで現マネージャー向けにとうたわれていますが、
これからマネージャーになる予定の方や、
営業企画の人にもとてもおすすめの内容になっています。


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■本書の構成


第1章:営業チームをマネジメントする考え方(売上管理・人材施策)
第2章:失注率が上がる原因
第3章:メンバーの意識改革、アプローチの手順
第4章:商談時に大事なこと
第5章:マネージャーの役割
巻末資料:営業プロセス管理ツール
 ・売上・粗利達成状況シート
 ・案件情報シート
 ・プロセス目標進捗シート(新規開拓セールス)
 ・プロセス目標・日報シート
 ・案件情報登録シート
 ・ヒアリングシート


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■立ち読みのポイント


⇒61ページ【 商談の基本姿勢 】


本書では、とにかくお客様に聞かれたことだけに答えるよう徹底を呼びかけています。


傾向として、多岐にわたる商品/サービスを持っている企業の営業の方は
しゃべりたがりなところがあります。
たとえば、新聞社系列の広告会社の方は、リアル媒体の枠もネット媒体の枠も持っていて、
ラインアップも豊富なだけに次から次に解説を始めてしまうケースがあります。


これはNG。もっとお客様の回答や質問を大事に、ということで
商談時の基本姿勢としてこんなことが望まれています。


◇商談の基本姿勢
・お客様の質問→なぜその質問をしたのかを考える
・聞かれたことだけを答える(ニーズを把握する)


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⇒74〜75ページ【 顧客へのヒアリング項目 】


家電量販店やファッション雑貨店を見ていて、
買わないけど気になるものがある時、
店員さんとの駆け引きって微妙ですよね。


でも、販売ノルマを持っている相手の立場に
仮に自分がなったとしたらどうでしょう。
「今日は〜をお探しですか?」ってやっちゃいそうですよね…


この箇所では、気持ちのいい販売員の対応の実例が登場します。
実例を要約すると以下の感じです。


◇顧客へのヒアリング項目
・これまで使ってきたものは?
・その特徴をどう感じてきたか?


特に、どんな人が、どんな目的で、どう使うのかということと、
薦める商品がお客様が求めている価値を提供できるのかを
念頭に対応すべきと紹介されています。


----------------------------------------------------------------------------
⇒107・135・173ページ【 営業時の食い下がり方 】


マーケティングもロールプレイも完璧にこなして、
さあ行くぞと営業に出てみたらメタメタになって帰ってきた…よくある話です。


営業現場は相手ありきなのでそうそううまくいきません。
そんなとき、どうやってお客さんに食い下がればいいのか?
本文では、テレアポや往訪などのステップに分けて紹介されていますが、
まとめると以下のようになります。


◇営業時の食い下がり方
・しつこくメリットを提示する(テレアポ)
・メリット自体に興味がないのか!?(テレアポ)
・断り文句をひとつずつつぶしていく
・具体的なボトルネックを聞く→自社の課題として考える
・メリットを追求することをやめたのか?→そうではない→ではどうやってそれをやる気なのか?


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(1)★


う〜ん。メインタイトルが「営業マンの授業」なので、
スタッフクラスの営業パーソンが多く手に取りそうです。
あまりいいのが思い浮かばないのですが、代替タイトルとして、
「エースを育てる営業マネージャーの極意」
あたりが妥当ではないでしょうか。


ナレッジ(5)★★★★★


本編はもちろん、巻末資料がめちゃ使えます。
特定の営業管理用フォーマットが無い企業や
営業企画部門がメタメタな場合には重宝するでしょう。
著者がリクルート出身のため、
リクルート仕込みの細かいフォーマットを見ることができます。
マネージャーや営業企画といった管理系のポストにいる方は、
この部分だけ見ても買いなはずです。


スキーム(5)★★★★★


とにかくお客様の話を聞く姿勢を持てという主張を軸に、
営業組織をどう管理していくか、
正しいアプローチの仕方とはどんなものかが展開されます。


総合(5)★★★★★


これから営業本を読もうかなと思っている方には
正にマスト買いな1冊です。
「聞く営業」とはどの本でもうたっていることですが、
本書はその手立てがとても具体的に載っています。


 

| 営業(アプローチ・プレゼン・営業ツール) | 15:00 | comments(1) | - |pookmark
小室淑恵の超実践プレゼン講座 (日経ビジネスアソシエ編/小室淑恵監修)

評価:
日経ビジネスアソシエ
日経BP社
¥ 2,310
(2008-12-12)
 


プレゼン本で挫折してきた諸兄に朗報です。
けっこういいムックが出ました。定価2200円と高額ですが買いです。


まず表紙をご覧ください。(画像参照)
そう、日経ビジネスアソシエで連載していた小室淑恵さんのプレゼン講座のムックです。


英会話と同じで、プレゼン本が長続きしない方、
けっこういらっしゃるんじゃないでしょうか。


実際私自身、書いてあるナレッジが細かすぎて
読んでいる途中で飽きてしまったり、
プレゼンというより話し方のナレッジに終始しているため
まったく読み返す内容のない本を選んでしまったり、
この分野では散々です。


なぜこんな本が出来上がってしまうのか?
それは多くのプレゼン本の著者が、"実際のプレゼン"とは無縁の立場だからだと言えます。


学者の先生やコンサルタントの方が書くと、
どうしても"講演"か"会議"のテクの解説になってきます。
でも私たちが欲しているのは、"実際のプレゼン"のナレッジです。


それは一体誰が持っているのか!?


監修者の小室さんは、
現在こそコンサルタント色が強い活動をされていますが、
元は資生堂の営業職です。


営業には1つの契約を取るために必死になるマインドが要求されます。
これこそが、
私たちにとって必要な"実際のプレゼン"のナレッジを生み出すように思われます。


ムックというと軽い感じがしますが、中身は骨太な1冊です。
まずは立ち読みのポイントから一緒に見ていきましょう。


──────────────────────────────────────
■本書の構成


基礎編
STEP1:顧客にとっての課題と提案の見つけ方
STEP2:資料づくり(プレゼンの構成)


実践編
STEP1:テクニック・時間配分、小室さんのお手本プレゼン
STEP2:資料準備・本番までの過ごし方のポイント


ケース編
CASE1〜5:雑誌連載時の受講生のプレゼン事例


──────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント


⇒34〜43ページ【 プレゼンの構成(起・承・転・結) 】


構成の組み立て方について、本書の内容を抜粋してみました。
まずはざっと目を通してみてください。


◇プレゼンの構成


起:課題と危機感の共有
 情報提供…基礎知識・業界事情
 課題提示…将来的な課題・未知の課題


承:課題の背景の分析、固定観念の払拭
 裏づけとなるデータの提示


転:課題を解決する提案
 商品・付加価値の提示
 導入事例の紹介


結:相手に行動を促す
 競合比較表の提示
 複数プランの提示/段階的プランの提示


起承転結や三段論法は類書でよく見かけますが、
お気づきの通り、
本書ではマーケティング上の目的を明らかにしています。
順番もこの並べ方だから相手を説得できる
というものになっています。


このフォーマットがあれば、
ある程度説得力のあるプレゼンが努力次第で可能です。


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⇒80〜81ページ【 付加価値を考える時の切り口 】


商品やサービスの付加価値(成果)を話すとき、
どうしても定性的な情報に頼りがちです。
相手を会社ごと説得するには、定量的な情報も必要。
でも自分文系出身だしそういうの苦手なんですよ〜
という私みたいな方、本書では以下の切り口を紹介しています。


◇差別化をもたらす付加価値の切り口
・費用対効果
・手間対効果


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⇒46・55ページ【 想いを語ることの大切さ 】


「成功しちゃう人脈はじつは公私混同ばかり」という人脈本のエントリーの時に、
夢を語れる人間は最強と書きました。(周りが協力したくなるから)
やりすぎは禁物ですが、プレゼンでも同じことが言えます。


本書では、出だしのつかみで自己紹介と共に
プレゼンに対する個人的動機を述べることを推奨しています。
その効果は次の通りです。


◇想いを語るメリット
・熱意、人間性を上乗せできる
・セールス色を消すのに有効


本来、「想い」は純粋にそう願っているという前提で、
それを語ることで、プレゼンター本人の魅力をアップさせたり、
共通のテーマによって相手とつながることができたり、
副次的な効果を得ることができるそうです。


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⇒87・96ページ【 なぜ自信が持てなくなるのか 】


本書のコラムで、プレゼン講座の受講生へ
小室さんからこんなメッセージが発せられています。(一部省略&意訳)


「スピーチで改善すべき点は、顔が下を向いていたこと。
気持ちはわかるけど、実は緊張で原稿を読む余裕はない。
つまり、自信がないから下を見る。」


なるほど。本書に出てくる
「自信がないことでプレゼンのレベルが下がる状態」をまとめると以下のようになります。


◇自信がなくて損をすること
・語尾のはぎれが悪くなる
・顔が下を向く
⇒説得力がなくなる


…かなり損をしますね。
これに対して、「どうしたら自信を持つことができるのか」
についても言及があります。


小室さんが会社を設立された当時、
ワークライフバランスの概念はまだ馴染みが薄く、
普及させるのに手間取ったそうです。


本書では相手を説得させるだけの
「キラーデータ」を収集するよう指示がありますが、
小室さん自身も、この時、必死で海外の事例やネット上のデータ、
アンケート・グルインなどからデータを集めたというくだりが紹介されています。


そうすることで自身の提案内容に自信を深め、
プレゼンの力がつくようになったわけですね。


自分で調べたという実感や苦労して集めた時の行動量が
こういうところでものをいうことを考えると、苦労は身になることがよくわかります。


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(2)★★


表紙の小室さんがアイキャッチなので、
書店では棚挿しになっていると死にますね…
でも、販売期間が短いムックという形態と
基本的にアソシエ読者に告知されていることを考えるとこれでいいのかもしれません。


ナレッジ・スキーム(4)★★★★


話の骨格となる構成の理解から
資料の作成といったテクニック面まで解説があります。
さらに、お手本プレゼンや事例が付いていて
公式を復習しながら理解を深めることができます。
死角はないですね。値が張るくらいです。


総合(4)★★★★


余談ですが、小室さん本当にキレイな方で。
本の内容がしっかりしているので
あまり外貌のことを持ち出すべきではないのですが、
間違いなく本の内容を引き立てる要素になっています



| 営業(アプローチ・プレゼン・営業ツール) | 18:58 | comments(0) | - |pookmark
成功しちゃう「人脈」はじつは公私混同ばかり (夏川賀央)

評価:
夏川賀央
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
¥ 1,260
(2008-11-05)



「人脈を広げる」というと、
真っ先に異業種交流会やセミナーを思い浮かべます。


ところが、参加して名刺交換してみても
これといった出会いにつながらなかった、
なんて経験は多くの方がお持ちだと思います。


なぜこうした効率性を重視した行動がうまくいかないのでしょうか?
著者は、もっと身近な人(=非効率になっている関係)に目を向けて、
自分を変えていく方法を紹介しています。


今回はできるだけ多くの項目を紹介したいため、
いっきに立ち読みのポイントへどうぞ。
 ↓  ↓


──────────────────────────────────────
■本書の構成


第1章:非効率な人脈こそが大事な人脈
第2章・第3章:自分に素直な(自分らしい)行動を取るメリット
第4章:相手への期待の仕方
第5章:公私混同、楽しさを優先するメリット
第6章:自分の夢に人を巻き込む方法
第7章:人に対する優しさを持つ


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■立ち読みのポイント


⇒85ページ・115ページ【 自分優先の人間関係のメリット 】


皆さんが最近「苦手だな〜、あの人」と感じる
人間関係を思い出してみてください。


思い出しましたか?
どんな場面で"苦手"と感じるのでしょう?


そう、人間関係で一番疲れるのは、「下手に出ること」です。
皆さんも上司や部下、取引先、プライベートでは家族やあるいは恋人に、
かなり気を遣って過ごしているはずです。


著者は、「特別な人脈」づくりを目指すのではなく、
素の自分の状態を受け止めてくれる人を大切にしろと言っています。


まず、自分が素でいて苦痛がないこと。
そしてここが重要なのですが、
素を受け止めてもらうためには、自分にそれだけの価値がないといけません。


多くの人脈本が書くように、
聞いてもらいたいこと・話したいことを集め、
自分から情報を発信していくことがいい出会いにつながるということです。


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⇒155・161〜163ページ【 夢には人を巻き込む力がある 】


ここでは、NTTドコモでおサイフケータイを開発した
平野敦士カールさんの逸話が登場します。


おサイフケータイのような電子決済システムの開発には、
当初様々な困難があったようです。


しかし平野さんは至るところで自分のアイデアを語り、
実現を諦めません。


そのうち、各方面で解決策を提示してくれるパートナーが出始め、
どんどん良質のアイデアが飛び込んでくるようになったそうです。


―きっかけは、平野さんが夢を語ったこと。


夢を持っている人間は最強だな、と最近とみに感じます。
まるで子どものように、主張し、お礼を言い、
周囲を巻き込んで成長していきます。


頼まれる側は、自分の夢を重ねる部分もあるので、
そのうち頼まれなくても応援したくなってしまいます。
この点は本当に子育てに似てる!


会社でも、はっきりとした夢を持っている人は少数派です。
まだよくわからないという人や、生活がかかっている人、
あるいは会社の成長そのものがいきがいの人もいます。


しかし、夢を持っている人は個人で局面を動かしていくことができます。
周りが助けてくれるから。


そのためにはまず、夢を語れる大人になりたい。
―これが私自身、最近の専らの願いです。


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⇒35ページ・183ページ【 ウィン‐ウィンではなく、ギブアンドギブ 】


主催者として、イベントを成功させるコツって何でしょう。
スター級のゲストを呼ぶこと?お客さんをたくさん集めること?もちろん重要です。


でも一番は、「スタッフ全員が同じ目標でつながっていること」です。
これがブレている組織は脆弱だし、強固な組織はお互いの信頼関係が違います。


多少自分にとってイヤなことが発生したとしても、
全体の中でそれがどういう位置づけなのかがわかれば、それは苦になりません。
全体として大きな目標に一歩近づくのですから。
「大のために小は忘れる」マインドが必要です。


著者は、「ウィン‐ウィン」という関係は、
お互いにメリットがなくなったとき解消されるものだと警鐘を鳴らしています。
太く長い人間関係にはなり得ません。


逆に、「ギブアンドギブ」という発想を持つことで、
自分が進んで何度でも助けたくなる関係は長続きします。


イギリス英語では、サンキューの返礼として「マイ・プレジャー(私の喜びです)」
という返しがあることを紹介し、
自分の喜びと思える人間関係の構築が大事だと述べています。


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(1)★


タイトルの第一キーワードが「人脈」なら、
第二キーワードは「公私混同」ということになります。
たしかに本文中でも「公私を超えた付き合いが人脈を太くする」ことが語られています。
しかしそこは本書が持つ数ある魅力のうちの一つであって、
より大きなキーワードは、「身近にいる好きな人を人脈にする」ことです。
「公私混同」が強いフレーズかというとそうでもないので、
タイトルで少し損をした印象です。
裏面のオビにあるキャッチがだいぶ的を得ています。
 ↓  ↓
「嫌い」なスゴイ人より「好き」な身近な人を大切にしろ!


ナレッジ(3)★★★


いわゆるテクニックという意味でのナレッジは入っていません。
異業種交流会やセミナーなどで手っ取り早い人脈をつかみたい
場合は本書以外をおすすめします。
しかし、本書はそもそも人脈に対するスタンスが異質で、
今ある人間関係をどう開花させるか、
その考え方を記したものです。
まず自分自身を振り返ることから始まるので、
ひと通り弾を打ちつくして途方に暮れている方には
新たな視点を提供してくれることでしょう。


スキーム(2)★★


多くの項目が1ページ半で編集されているためとても読みやすいです。
ひとつひとつの見出しも工夫されていて、
『なぜ「飲みニケーション」はうまくいかないのか』など、
現状を確認する項目も多いため、
立ち読みの際に目次を見ていて気になる箇所を探しやすいですよ。


総合(4)★★★★


実際に自分自身が「身近な人脈でアタり始めている」時に読むと
すごく納得できる・考え方が深まる一冊です。
人脈が広い人は、方々で誘いの声をかけて回っています。
その付き合いを「特別なビジネスパートナーにはなり得ないから」という理由だけで
バッサリ切ってしまうのはもったいないこと。
自分が一緒にいて居心地がいい人とは
自分からどんどん情報を発信してぶつかっていくべきだと
気づきをもらえる一冊です。

 

| ヒューマンスキル(コミュニケーション・話し方・人脈づくり) | 19:44 | comments(0) | - |pookmark
生命保険はだれのものか (ライフネット生命/出口治明)
 


「生命保険」と聞いて「面白そう」と思う人はまれです。
そもそも生保の本を取り上げている
このエントリーを見ていただいているだけで
皆さんだいぶ我慢強いか方かと拝見します(笑)。


何がそこまで生保を面白くさせていないのでしょうか?
若い人にこの傾向は顕著で、
リクナビ発表の調査では、人気企業TOP100のうち、
損保会社が3社登場している中で(損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上)、
生保は45位の日本生命1社のみです。
▼リクルート/大学生の就職志望企業『就職ブランド調査2008』
http://www.recruit.jp/library/job/H20080417/docfile.pdf#search='就職希望企業調査'


どれくらい異常かというと、
業界規模・企業数・CM投下量・身近に関わっている人の数を考えると、
大学生からの認知度は(少なくとも損保より)相当のものがあるはずです。
大学生が知っている企業数はたかが知れています。
中小はほとんど認知していません。
にも関わらずこうした結果が出ているということは、
たまたまというより「生保不人気」が顕著と言っていいでしょう。


先日、某国内大手生保の教育担当者の方とお話する機会がありました。
その会社では、2年でまるっと(営業)担当者が入れ替わるそうです。
契約のプレッシャーだけでなく、アフターフォローの煩雑さ、
クレーム対応などが重圧になり、辞めていくケースが多いとのこと。
「もっと続ければそのうち良さがわかってくるのに‥」
と嘆いていたことが印象的でした。


いまの若い人は"そのうち(良さがわかる)"を自分で判断しますから、
「頑張ろう!頑張れ!」ではきっと響かないでしょう。
もし自分が生保の業界関係者だったら悔しくないですか!???
自分ならこれはとても悔しいと思いました!!


個人的に生保の最大の課題は、
「担い手に(営業マンも顧客も)面白さを伝え切れていない」ことに尽きると考えています。


では、業界の人すら感じ取れない生保の"何が面白い"のかを、
この本と一緒に少し皆さんも考えてみませんか。

私の中途半端な熱い想いにより、いつもよりちょい長めでお届けしますが、
著者が起業したライフネット生命のサイト分析なんかにも
チャレンジしていくのでぜひお付き合いください。


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■本書の構成


★ 第1章:生命保険の問題点
★ 第2章:生命保険のビジネスモデル
★ 第3章:生命保険の種類
★ 第4章:生命保険の販売チャネル
  第5章:生命保険の規制
  第6章:生命保険の運用
  第7章:生命保険の世界事情
  第8章:生命保険の歴史
★ 第9章:消費者としての選び方


※ ★印は本書の魅力を理解するのに必読の箇所です。
  無印は周辺知識を得るための解説なので、特に必読とは思われません。
 (何せ興味がない方は、気合いを入れて読む必要があるテーマなので‥)

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■立ち読みのポイント


⇒64ページ【 生命保険の種類 】


なぜ生保が嫌われるか、という命題のひとつに、
「商品が複雑」ということが挙げられます。
そもそも契約時の内容って覚えていますか?
完璧に思い出せる人は少数だと思います。


それもこれも、特約・特約・特約‥で、
電話料金より難解な契約明細を見ても
「要はどんなときにいくら支払われるのか」がわかりづらいからです。


本書の当該ページでは、
要は生命保険とは基本3種類(死亡保険・生存保険・医療保険)で、
保険期間(定期と終身)との組み合わせなのだとわかります。


営業マンに聞けば「当たり前じゃないですか」という話になると思うのですが、
要はこんな単純な商品構造が、客からすれば言葉を変えられるだけで
わかりにくくなるわけです。


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⇒15ページ【 なぜ保険商品はわかりづらいのか 】


私たちが通常想像する"保険やさん"は、どこどこ生命のだれそれさんです。
つまり、自社商品を販売する専属の営業マン/セールスレディーです。


著者が指摘する業界の問題点とは、
1社専属のセールスパーソン体制→比較情報が普及すると企業は困る
→複雑な商品を開発する(利幅が出る特約など)→消費者にとってわかりづらくなる
ということにあります。
著者が例に挙げる通り、家電や野菜のように
店やネットで気軽に情報を集めてくるのが難しい分野です。


商品がなぜ複雑化していったかについては、
88ページにも包括的にまとめられていますので、
併せて読んでみてください。


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⇒186ページ【 生命保険の誤った選び方(保険料を目安にする) 】


私も読んでいて、「えっ、保険料を目安にしちゃいかんの?」と思いました。
損はしたくないので、平均値がこれくらいだから
これくらいにしとけば安全という心理が働きます。
あとは「月1万円くらいだったら」という考え方。


本書ではこれ以降の部分で、
1)保険の機能(死亡保障・生存保障・医療保障)
2)保険への依存度
3)ライフスステージ
以上3つに基づいて考えるべきと案内しています。


要は、最終的な判断として保険料の絶対額が
"高いか""安いか"のジャッジはあるものの、
何にどれくらい必要かを知らずして
それを決定することはできないということです。


この部分は選ぶ側にも問題はあって(というか思いっきし私)、
面倒くささが先行して、
営業マンが提示してくる「あなたに合った"お得プラン"」に乗ってしまうことです。


消費者として改めるべきは、
「損をしなたくない」という考え方です。
保険という商品の性質上、
「要がなくても掛け捨て」というマイナス心理が発生しますが、
そこを押し殺して、「人生設計を自分で選択する」ための「必要経費」として
認知し直す必要があります。


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■ライフネット生命について


エントリーの冒頭で、若い人ががしがし辞めていく
国内大手生保の話を紹介しました。


あらためて保険の営業の何が難しいのかを
契約面に焦点をあてて考えてみると、
0からの新規契約よりも、スイッチさせる方がかなり難しいことに気づきます。


既に人の関係が構築されている上に、
「損をしたくない」という顧客心理が大変に作用します。
これを切り崩すのは容易ではありません。



著者の出口治明さんは、
2008年5月、ライフネット生命を始動されています。


成功するには、
私なりに思いつくだけでも2つの大きな難点があります。

1)会社/商品のブランド力が無い
2)WEBという新型のチャネルが認知されていない


いずれも保険という商品が会社や人の信用力を背景に展開していることもあり、
後発で挑むのはけっこーきつい世界であることは言うまでもありません。


これはどのネット企業でも同じだと思いますが、
既存のチャネルからWEBへの転換を提示するときに、
既存のクライアントなりユーザーから必ず抵抗が起こります。


でも、現状をひっくり返せたらすごいですよね!?
しかもその予感を感じさせるのがライフネット生命のサイトのすごいところです。
では、実際にそのサイトの分析結果を見てみましょう。


▼ライフネット生命WEBサイト
http://www.lifenet-seimei.co.jp/


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■サイトの分析
※直接の書評には影響しないので、必要に応じて読み飛ばしてください〜。


とにかくすごい!このサイト。個人的に「フォートラベル」を見た時以来の感動です。
何がすごいって片っ端から見ていって欲しいのですが、
時間も無いのでここでは大きく2点ほどに絞って取り上げます。


1)ユーザーニーズの掘り起こし
ネットで生保を売る、そのターゲットは誰か?ということを考えた時に、
ネットに親しんでいる生保ライトユーザーという像が浮かんできます。
その人たちが必要としている情報は何か?
正に本書にあるような生保の基本情報です。
これに応えるべく3つの仕掛けが用意されています。


 ●刺さるキャッチコピー
 私自身が保険を見直すにあたり最大の障害が、「今までの掛け金を損するのではないか」
 ということでした。これをクリアするかどうかが大きなジャッジの分かれ目です。
 そうしたら、ちゃんと答えが用意されているんですね。
 トピックパス(サイト内の経路をページタイトルで追ったもの)で記すと、
 ホーム>知らなきゃ損の保険の仕組み>生命保険の見直し方
 『「途中で解約したら損」というのは思い込みです』の箇所。
 ここで、見直しにより節約も可能であると「メリット」が語られます。
 しかるべき場所にしかるべきコンテンツが用意されている、大事です。
 他にも、「生命保険の選び方」「生命保険の比較ポイント」といった見出しで
 徹底したユーザー目線のサイトを作り上げています。


 ●目からウロコの保険塾
 これはネット生保導入の必要性を、紙芝居形式で案内したコンテンツです。
 導入部では「面倒くさがらずに保険を選ぶ必要性」を説き、
 後半部では「ネットで生保を選ぶ」メリットを説いています。
 私たちが保険の営業を嫌がるのは、
 自社の保険商品について延々と語られることに対する
 "商品がよくわからない"という困惑と"時間を損した"という苛立ちの
 2つの大きなフラストレーションが自然と発生するからです。
 ライフネット生命は、既存の生保が得意とするマンパワーによる規模のメリットを、
 「本当は商品のことをよく知りたい」「自分のタイミングで考えたい」という
 ユーザーメリットに則り、ネットの特性で覆えそうという戦略を取っています。


 ●FAQ(よくある質問)
 未知なるネット生保なので、当然ユーザーからの質問も多く寄せられます。
 通常、BtoCサイトのFAQは"企業が想定するFAQ"であって、
 必ずしもユーザーが期待するFAQになっているわけではありません。
 しかしそこはライフネット生命、FAQもイケています。
 ページを見ると、日付・質問内容・アクセス数・お役立ち度の順で
 項目が並んでいます。
 そう、アクセス数・お役立ち度といった「ユーザー基準」が
 ここにも取り入れられています。
 さらに項目を、アクセス数・お役立ち度・掲載日毎に並び替え可能です。
 マーケティングの視点で見ると、
 アクセス数=重要度、お役立ち度=満足度ということになりますから、
 FAQを通して自社のマーケティングに役立て、ユーザーにも公開していく
 という姿勢が読み取れます。


2)導線とコンテンツの噛み合わせ
トップページにあるグローバルナビゲーション
(各主要コンテンツの大見出しのようなもの)を見ると、
ネットでユーザーをクロージングさせるまでの流れが
しっかりと組まれていることがわかります。
実際の並び順は少し異なりますが、想定されるユーザープロセスは、
以下のようになります。


「知らなきゃ損の保険の仕組み」(=生命保険の基礎知識)
 ↓どんな商品があるのか知りたくなる
「生命保険商品案内」(=商品ラインナップ)
 ↓実際の自分の現状が知りたくなる
「生命保険選びツール」(=シュミレーションツール)
 ↓自分の判断基準を確かめたくなる
「見積もり」(=契約・クロージング)


求人サイトや不動産賃貸サイトを見ていて思うのは、
特集だの、おすすめだの、今すぐ資料請求ボタンだの、
制作サイドの都合で作られている要素が多すぎることです。
ユーザーニーズが発生していない段階から
これらを表示させるから、使う側としては違和感を感じるのです。
(もちろんビジネス=営業の側面からは意味が大アリなのですが‥)


ライフネット生命のサイトは、
保険必要ですよね→こんな商品があります→これでシュミレーションできます
というように、ネット上での営業にまるで無駄がないのです。
というかむしろすべてユーザーにとって必要。


こうした導線とコンテンツの噛み合わせは、
ボヤっと他社サイトを眺めて作っているだけでは思いつかないので、
本当にすごいという他ない。


参考までに、経済評論家の山崎元さんも、
以下のサイトでライフネット生命のサイトについて評価しています。
専門家の視点もぜひ読んでみてください!


▼ダイヤモンド・オンライン 山崎元のマルチスコープ
『生保は金融ネットビジネスの「最後で最大のフロンティア」』
(サイトの評価自体は3〜4ページ目で言及)
http://diamond.jp/series/yamazaki/10031/


──────────────────────────────────────
■生保と営業の魅力


そろそろ冒頭の問いに対する回答をしないとですね。
すなわち、「生保の"何が面白い"のか」についてです。


それはずばり、「あらゆる無形サービスの基本になり得る」ことです。
生保を頑張って極めたら、無形サービスとして
最も難解かつハードな分野を制覇したことになります。


特に営業にパワーがかかる側面から、
マーケティングの4Pを強烈に意識する場面が多いため、
私のように事業企画として食っていきたい人や、
その他、トップセールスを目指したい人、起業したい人にとっては
この上ない"見返り"なのではないでしょうか。


生保を売っている人は本当に大変だと思いますが、
そこに確かな"夢"は存在すると思います。
他人事ですが(汗)、応援してます!!


(ちなみに)
だいぶ褒めちぎってきましたが、
私自身はライフネット生命に入っていません。本当です(笑)。


やはり保険は対面で買いたいのが心情で、
その分の付加保険料(保険会社にとっての手数料収入)が
上乗せされるとしても支払いたいと思えるからです。


この心情を持つユーザーをひっくり返していく(あるいは切り捨てる?)のだから、
ネット生保の方も大変だな〜と思います。


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(5)★★★★★


生保についての本は腐るほどあります。
その中でなぜ本書を手に取ってみる気になったのか。
それはやはり、業界の問題点を
ビジネスモデル的な側面(販売チャネルや商品の利益構造)から
説き起こしたことに尽きます。
表紙にはシンプルすぎるタイトルの横に、
「業界の風雲児(が一刀両断)」とあり、これまた月並みな文句であるにも関わらず、
私たち消費者が知りたい情報があるのでは?、と期待させてくれます。
であれば、「生命保険はだれのものか」というシンプルすぎるタイトルは
これ以上でも以下でもないベストなタイトルだと言えます。


ナレッジ(5)★★★★★


人には"知る楽しみ"があり、生保においても同様です。
それを阻害してきたのは、一方通行な営業マンであり、
用語集に近い類書の存在です。
本書では、第1章で「なぜ私たちにとって保険商品はわかりづらいのか」
という消費者共通の疑問を解説するところから始めているので、
興味関心が高まったところで保険の種類(第3章)を学ぶことができます。
知的欲求を満たしつつ、
業界研究にも保険選びにも役立つ1冊です。


スキーム(5)★★★★★


主にナレッジ面から本書を評価してきましたが、
"語り口"も非常に巧みです。
ひとつは、まるでその場で対面しているかのような呼びかけの多用です。
 <例>「図表X‐Xを見てください」(主に第1章)
     「本書をここまで読んでこられた皆さんにとっては、生命保険はちっとも難しくないはずです」(189ページ)
もうひとつは、項目が複数あったときのまとめの言い換え。
 <例>「以上述べたように、自分に必要な生命保険を考えるときは〜(中略)
     の三つを考えてみると、自分の考え方がぐっとシンプルに整理されるのではないでしょうか」(192ページ)
こうした細やかさが、読者の頭を整理し、
大事なことを意識させる要素になっています。


総合(5)★★★★★


かなり好き勝手書き散らかしてきました。
途中、サイトの評価を交えたのでわかりづらくなってしまいましたが、
純粋に本の出来で★オール5です!!
著書としての完成度も高い(上記「ナレッジ」や「スキーム」参照)のですが、
何より企業としての戦略や出口さんのミッションがはっきりとしていることが、
そのまま本の読みやすさにつながっています。
保険のテキストとしても、本の書き方としても、(サイトのつくりも)、
掘れば掘るほどザクザク宝が出てくる良書です。

 

| ライフスタイル(衣食住・キャリアアップ) | 20:43 | comments(1) | - |pookmark
顧客を動かす!インタビュー式営業術 (竹林篤実)



営業をしていて、「会話が続かな〜い(泣)」っていう経験、ありませんか?
私自身、飛び込みメインの新規開拓の時はそんな間もなかったのですが、
新卒で入った会社で代理店営業をしている時はしょっちゅうでした。


会話がなくなると、
必然的に営業の主導権もこちらにはなくなってしまうので、
営業としてはできれば避けたい事態です。


このブログでは、しばしば営業科学ならぬ、お笑い科学(今、名付けました)として、
コミュニケーションの取り方について色々な笑いの研究本を紹介してきました。
でも、どうせ学ぶのであれば、誰かのワザに倣うのが手っ取り早い方法です。


今は年末なのでテレビをつければお笑い芸人がわんさか出てきますが、
やはりコミュニケーションに対して秀逸なのはタモリ!


笑っていいともの年末特大号を見ていて、
ゲストと1対1で話す定番コーナー「テレフォンショッキング」の総集編で、
よくもまあ毎日毎日、文化人からタレント、スポーツ選手に至るまで、
ありとあらゆるタイプ・立場の人と絡めるものだなとあらためて思いました。


タモリ+話術で検索をかけると、おもしろい分析をしている記事を発見。
この手のネタが好きな方は必見です(ブログ自体はちょっと色っぽい内容ですが…)。
↓↓   ↓↓
▼タモリに学ぶ会話術 
http://d.hatena.ne.jp/chabatake-2007/20071101/p1


この記事によると、「髪切った?」に代表されるように、
タモリの会話は、相手の容姿の変化に気づく→そのきっかけや経緯を聞きだす
のような無理のない展開を徹底しているそうです。


年が明けたら私たちはまた営業現場に戻るので(笑)、
つかの間のテレビを堪能しておきましょ〜。


今回ご紹介する営業本は、「インタビュー式営業術」。
センサーメーカーとして有名なキーエンスの営業手法を題材に、
その成功要因を独自のメソッドで紹介しています。
さっそく立ち読みのポイントを見てみましょう。


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■本書の構成


第1章:キーエンスの営業が受け入れられている理由
第2章:いい営業パーソンの特徴
第3章:聴くことで成功を収めた事例
第4章:インタビュー式営業術の流れ・ナレッジ・創作事例
第5章:インタビュー時に行うコミュニケーションのテクニック
第6章:あなたにもできるという励ましの言葉


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■立ち読みのポイント


⇒103〜114ページ【 予備調査の進め方 】


インタビューをするにはネタが必要です。これが曲者。
本書ではこのネタをどのように拾ってくるかを
細かく紹介してくれます。


◇インタビューをするときのネタの探し方
1)インターネット検索
     社名
     社名+キーワード(主力製品、経営者名)
     社名+募集(採用意向、募集部門、賃金)
2)IR情報
     トップメッセージ
     業績推移(売上、利益)


言われてみれば至極当然。
でも、日々の営業に追われているとついついサボりがちになってしまいます。


本書では、キーエンスの営業は、商品情報・顧客情報の勉強に週3日割き、
決して上から「出かけて来い」という号令は飛ばないと解説されています。


実際、こうした理想的な社内環境の企業は、
一部のなのではないでしょうか。
部門長クラスの方の年代が40〜50代だと、
やはり努力と根性で築き上げてきた自負が強いからです。


私がベンチャー企業に身を置いていた時分にいいなと思ったのは、
事業担当者がプロデューサーのようにメインで存在して(これが私)、
顧客に張り付く営業担当と連携しながら営業を進めていく形式です。


これから既存のマーケティング職に取って替わって、
片足を営業に突っ込んだ形での事業企画・営業企画職の存在が
重要になってくるのではないでしょうか。


----------------------------------------------------------------------------


⇒119〜140ページ【 2段階インタビュー 】


著者が推奨するのは、1回で商品プレゼンを行う売り込み営業ではなく、
訪問回数を2回に分けて行うインタビュー式営業で、
それぞれ目的は以下の通りです。


◇2段階インタビューの目的
1回目:現状の問題点を共有する
2回目:現状の問題点が引き起こす将来的な問題点とその解決策を導き出す


現在、営業で成功している企業(リクルートとか)は、
確かに段階を踏まえて営業をかけてくるパターンが多いです。


中には訪問回数を3回以上にしている企業もありますが、
これはさすがに顧客にとって煩わしいだけ。
では、訪問回数を2回に分けるメリットはどんなところにあるのでしょうか。


◇訪問回数を2回に分けるメリット
・仮説に対する答えを元に提案をつくる時間ができる
・1回目よりも人間関係が深まった状態で話ができる


相手が忙しい場合、次回アポを取るのが難しくなりますが(嫌がる相手も多い)、
そんな時にはこんな殺し文句を使えと紹介されています。


◇次回アポを取る殺し文句(128ページ※一部省略)
「今日伺ったお話を元に、現状のレポートをまとめさせていただきます。
このレポートを元にもう一度、お話をさせていただけますか?」


こうすることで、顧客にも「もらえる情報はもらっとくか」
というインセンティブが働きます。


難しいのは、実際には「営業をかけて欲しい」顧客もいること。
切羽詰まっている相手だと(特に時間がない経営者)、
「インタビュー?
お宅の商品/サービスの特徴を話してもらって、後は私が聞きたいことを聞くから」
という方もいます。


実際にそう話さなくても、そう思って行動している中小の経営者は多い。
ここでどうイニシアチブを握っていくかは、
本当に営業パーソンの腕と経験の見せ所になってきます。
ホント、営業って難しいですね…


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(4)★★★★


本書の内容を「インタビュー式営業術」という具体的なナレッジで表現しています。
おそらく読者ターゲットは、ソリューション営業をしている人です。
ソリューション営業の難しさは、
すべての取っ掛かりとなる「ニーズの掘り起こし方」にあります。
アポ取りや集客のテクニックは別の本で学ぶとして、
いざ商談するとなると会話はけっこう難しいです。
そんなときに、「インタビュー」という言葉は、
ソリューション営業をする人にとってとても刺さる言葉になっていると思いました。


ナレッジ(3)★★★


著者自身が苦労して営業をしてきたんだな、というのがわかる内容です。
というのも、手立てがとても具体的だから。
特に第4章(インタビュー式営業術の流れ・ナレッジ)は、
各ステップの目的とナレッジが一致しており、
現実に読者が実行できるものになっています。


スキーム(2)★★


第4章までの流れがいいだけに、
第5章(インタビュー時に行うコミュニケーションのテクニック)や
第6章(あなたにもできるという励ましの言葉)はかなり蛇足な感じがします。
時間が無い方は読み飛ばしましょう。


総合(3)★★★


私たちが実行できるナレッジは確かに存在しているので、
営業や営業企画の方は"買い"です。
★3に留まった理由として、インタビュー式営業の題材に取った
キーエンスの分析がやや曖昧なところです。
読者としては、そこまで言われるとキーエンスの営業方法自体も
気になるなあというところですが、
あくまで著者の言葉で置き換えられて紹介されるに留まります。
著者の提唱するナレッジが申しぶんないのでいいのですが、
キーエンスの位置づけがどうも曖昧ですっきりしません。

 

| 営業(アプローチ・プレゼン・営業ツール) | 21:54 | comments(0) | - |pookmark
「好き」を仕事にする! All About式 年収100万円アップ術 (オールアバウト編集長/森川さゆり)



ニュースをつければどこも「派遣切り」が
トップニュースで飛び込んでくる時世になってきました。
テレビでは派遣業者の人も
「仕事そのものがないから紹介できない」とあきらめ口調で嘆いています。
こういう時のための契約形態とはいえ、
若い人が貸家を追われて職を探す姿は忍びないものがあります。


最近マンガ喫茶で「島耕作」シリーズを読むのですが、
この著作では、日本と中国の労働意欲を比較して、
中国の若者が家族を養うために必死で目の前の仕事を吸収するのに対して、
日本の若者は「自分探し・自己実現」を求める傾向が強いと語られています。


たしかに主人公の島耕作は、日本を代表する総合電器メーカーにありながら、
レコード会社を手がけたり、ワインの輸入をしたり、ゴルフ事業を展開したり、
ありとあらゆるビジネスで実績をつくったことが評価され、
現在の地位(社長)がある設定になっています。


つい最近まで労働市場におけるトピックは、
「3年で会社を辞める人が3割」ということで、転職の是非が問われました。


本書でも25ページでOLの仕事満足度アンケート結果を掲載しており、
今の仕事内容で不満に思うことは、
・スキルアップのチャンスがない
・今の仕事は今後の自分にプラスにならない
ということだと紹介されています。


果たして、仕事は選ぶものなのか?選んではいけないものなのか?


著者はリクルートで「じゃらん」や「ゼクシィ」の創刊を担当された方です。
リクルートの人材育成方針を考えると、
様々なジャンルの編集に関わってきたからこそオールアバウトのような
総合型のサイト編集ができるわけであり、
この育成方針は著者に良い結果をもたらしたことになります。


私自身は転職組のため、仕事は選んでもいいと考えています。
もし業種・職種が人生で1回しか選べないとしたら
かなり大博打になってしまいます。


そしてできれば、本書のタイトルにあるように、
「好きなことを仕事にすべき」だと思います。
理由は、"勤勉さ"はキャッチアップされるものでも、
発想力や独創性はキャッチアップできないものだからです。
それが発揮されるのは本当に好きなことを仕事にしているとき。


オールアバウトのガイドの方が味わう苦労とやりがいを本書を通して知りながら、
少し自分のキャリアを振り返ることができる一冊です。


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■本書の構成


第1章:好きなことの専門家になるメリット
第2章:オールアバウトのガイドになるには
第3章:オールアバウトのガイドの仕事内容
第4章:ガイドになることで得られる影響力
第5章:ブログつくり方(ターゲティング・企画・ライティング・写真)
第6章:オールアバウトの新事業
付録 :自己振り返りシート


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■立ち読みのポイント


⇒154ページ【 タイトル・キャッチコピーの付け方 】


私は冠婚葬祭の時にオールアバウトの記事を参考にします。
その時に目を引くのは以下の2点です。
1)興味を引かれるキャッチ(見出し)
2)適度な文量で構成された画面遷移


いずれもいい意味で雑誌感覚を大事にしているのでしょう。
とても読みやすいです。


ここでは読ませるタイトル(見出し)の作り方として、
以下の7つの方法が取り上げられています。(一部、私自身が意訳)
1)共感
2)流行
3)限定感
4)網羅性
5)言葉あそび
6)挑発
7)意外性


キャッチコピー制作ではこうした"切り口"があると非常に便利です。
まだ型を持っていない方は参考にしてみてはいかがでしょうか。


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それでは5点満点での評価です。


タイトル(0)−


オールアバウトでガイドになれば、
年収100万〜1000万アップになるケースもあるよという意味合いで使われています。
ガイドになれることを前提にした表現ですが、
そもそもガイドになる審査のハードルが高く、
結局は本人のナレッジによるところが大きいため、
「年収100万アップ術」はどうかと…
本書のスタンスが情報提供型なのか企業広告型なのか
いまひとつはっきりしないため、タイトル付けも難しいですね。
もし情報提供型なら、
「オールアバウトのガイドが実践する専門家サイトの作り方」とか、
もし企業広告型なら、
「オールアバウトのガイドになってステージアップする方法」
あたりがいいかなと思います。


ナレッジ(1)★


本書には色々な側面から私たちを引きつけるフックがあります。
キャリアの自己啓発・オールアバウト事業の分析・ブログのナレッジ吸収。
しかしどれも中途半端でおまけ的な臭いがします。
結局、「ガイドになるには」がやはりメインで、
ここの関心が高くないと買いではないです。


スキーム(1)★


結局、「よかったらガイドになってね(申し込んでみて)」
というスタンスで最後までいくので、
本当にガイドになりたい人は満足できたとしても、
普通にオールアバウトの事業に興味があって
分析によりナレッジを得たい人には物足りない内容です。
付録として、巻末に「自己振り返りシート」が付いているのですが、
これを第1章に挿し込んで、自己啓発部分を厚くしたら
もっと読み応えがあったかもしれません。


総合(1)★


というわけであまり買いではないです。

 

| ライフスタイル(衣食住・キャリアアップ) | 22:02 | comments(0) | - |pookmark
プレゼンの上手な話し方 (福田健)

評価:
福田 健
ダイヤモンド社
¥ 1,575
(2008-12-12)



最近マンガ喫茶に入って、「島耕作」シリーズを読んでいます。
連載開始当時課長だった島耕作が、今は社長です。


「課長編」なら読んだことあるよという方、
ぜひ「取締役編」以降を読んでみてください。内容が違います。


というのは…内容にもよりますが、
普通のマンガは1冊読むのに、20〜30分あればいけます。
ましてたくさん数を読みたいマンガ喫茶でなら
なおさら飛ばし読みが基本です。


しかし、「取締役編」以降の島耕作は、
とにかく登場人物のセリフが長い!
大抵が国をまたいだビジネスにおける
市場概況の説明とあいなるわけですが、
島耕作が手がけるビジネスを理解しようと思うと、
ある程度我慢読みが必要なわけです。


時間を計ってみると、1冊約50分!
お得意の3時間パックで3〜4冊しか進みません(泣)。
まったくもってマンガ喫茶で読むのに向かないものを
読んでいるなあと思いました。


さて、そんなわけで
課長〜部長時代は人脈を使った情報収集が主だった島耕作の仕事も、
取締役就任以降は情報発信を求められています。
自分ならどんな風に市場を変えていくかということについてです。


このマンガがいい代表例のように、
私たちは子どもの頃から「偉い人の話を聞く」習慣が根強いです。
社会に出て相応の役職に就いて、
初めて意見を求められる機会が出てきます(多くの場合)。


私たちが「プレゼン」という言葉に高い関心を払っているのは、
それだけ大人になってから学習するテーマとして
喫緊の課題になっているということですね。


少しプレゼンと関係のない箇所をご紹介しますが、
さっそく「立ち読みのポイント」をご覧ください。


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■本書の構成


第1章:プレゼンターとしての心構え
第2章:聴衆のスペック確認、話の組み立て方
第3章:導入部の持っていき方
第4章:気をつけるべきこと、ワンランク上の話し方
第5章:相手とのコミュニケーションの取り方


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■立ち読みのポイント


⇒207ページ【 お客様から出るNOの種類 】


プレゼンというより、営業現場にて聞かれる「お客様からのNO」。
著者は、NOの内容を以下のように分類して突き止めるべきと提案しています。


1)アプローチのまずさからのNO
2)とりあえず言うNO
3)自信のなさからくるNO
4)強い口調で決めつけるNO
5)不信感によるNO


私たちは往々にしてお客様からの真意を図りかねて
「NO」を額面通りに受け取ってしまうことがあります。


営業では「NO」と向き合って科学的に処理する必要があり、
まずは本書が言うように、「説得はNOから始まる」ことを
マインドに刻み込むことが大事です。


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それでは5点満点での評価です。


タイトル(0)−


同様のタイトルが多い中、何のひねりもないタイトルです。
書店で面展開している新刊時には手に取ってもらえても、
1冊で棚差しになったときはどうするのでしょうか。
本書のミソは第5章の「プレゼンとは説得すること」にあるため、
たとえば「説得力倍増プレゼンのコツ」など、
内容の強みと合致したタイトルがいいかなと思いました。


ナレッジ(1)★


プレゼン本や話し方本を初めて見る人には、
「なるほど」と映る箇所もあるかもしれません。
でもビジネス本好きである読者の皆さんのステージを考えると、
まったくもって新規に学ぶところはない内容です。


スキーム(1)★


第5章がなかなかイイのですが、
そこにたどり着くまでが紋切り型の話し方講座のオンパレードなので、
話し方本と大差ない第1章・第2章は
読み飛ばした方が時間を節約できます。


総合(1)★


プレゼン本が欲しければ買ってはいけません。
「教科書」にはなりますが、
基本的に巷の話し方本の域を出ていません。
しかし、営業職の人は別です。
立ち読みのポイントでご紹介した部分は
営業マインドを形成するにあたって大事だと思われ、
場合によっては購入も検討してみてはどうでしょうか。
 

| ヒューマンスキル(コミュニケーション・話し方・人脈づくり) | 12:07 | comments(0) | - |pookmark