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ヨコハマ発熱! どうするんだ子供の教育(横浜青年会議所)
評価:
社団法人横浜青年会議所
ダイヤモンド社
¥ 1,575
(2007-11-09)
今の子どもたちには、「その場しのぎで他人任せ」なところがあります。

サービス至上主義の社会で手厚く扱われ、欲しい情報はインターネットで収集できる。
生きていくのに困らない反面、何を選んだら良いかわからないのです。
必然的に、計画性を持って判断していくことが苦手になります。

大人社会はまったく別で、計画性が無い人も判断できない人も求められていません。
このギャップはすごい。

でも世の中の流れが今の子ども像をつくってきたのですから、
今後もよりいっそうこの流れが強まっていくものと予想されます。
たとえば、
企業が不正をしたらけしからんということになって、
もっとしっかりサービスを徹底しようよというムードになります。
客(子ども)に逆らえない店員(大人)が誕生します。
あるいは、
ネットにおける検索技術の精度が飛躍的に高くなれば、
子どもにとっては、誰かが調べてくれているからこれでいいや、となります。

これは子どもが悪いのではなく、
大人社会の構造をそのまま子どもに適用してしまっていることに問題があります。

「大人対子ども」は、どんな場面でも「大人対子ども」でいいと思います。
そうでないと、親が気づかない、見張っててやれない場面はたくさんありますから、
常に(大人としての)同じ基準から子どもを見てあげることができなくなります。

そう、必要なのは地域社会の参加です。
今の教育論議を見ると、やれ親が悪い、学校が悪い、官僚が悪い、子どもが悪い
と責任の押し付け合いになっています。

テレビでは親の奇行ぶりが騒がれていますが、
これは一部の親の側面を切り取って、メディア側が「トレンド」にしただけです。
私はいくつかの幼稚園で親御さんたちの様子を見ていますが、
多くのお母さんがしっかりと厳しく子どもに接しています。
子どもの片づけや身じたくで手をかそうものなら逆に怒られます。

いわゆるモンスターペアレンツの担任をしている先生は、
「いやいやあなた‥」と反論されると思いますが、
要は子育てにおける親の個人差を「誰が」「どうやって」埋めるのか、
その仕組みづくりが求められています。
────────────────────────────────────────
本書の構成は、
第1章〜第6章まで対談です。
一応、章ごとにテーマは設けられているのですが、
読んでいくとほとんど違いは発見できません。
見どころはやはり、第1章の中田宏氏(横浜市長)と渡邉美樹氏(ワタミCEO)の対談です。
教育書というとまるで中身の無い空論が展開されることが多く、
これが一般の人に伝わらず、ますます教育への関心が薄れるという傾向がありました。
本書ではここに取り上げたおふたりを初めとして、
現場で実際に「俺たちはこうやって変えるんだ」という施策を
実行している方たちの対談なので説得力が違います。
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■立ち読みのポイント

⇒19ページ【親の意識の変え方】
前後の文脈は「親の意識をどう変えていくか」というテーマになっています。
渡邉さんは、
「子どもを変えることで親を教育していく。そのために学校という機能が必要」
という説を展開しています。
常識では考えられないドラスティックな発想ですが、
企業社会では「先輩がダメなら後輩のお前が変えて行け」という発想は当たり前ですから、
ひょっとしたら的を得ているのかもしれません。

⇒28ページ【子どもの職業観が狭い理由】
日本の子どもたちの将来の夢が「サッカー選手」ばかりである状況を、
中田市長は子どもの世界観が狭いからと解き明かしています。
市長自身が「政治家になりたい」と子どもに思わせることを目標に掲げています。
選択肢が多様化している社会の魅力は何だと問われたら、正にこれです。
私が好きな時代小説の世界では、背景には常に身分制度があります。
結婚も転職も自由はまったくない。
現代は逆で、ありすぎる選択肢の中からどう子どもたちに選ぶ力をつけさせるか、
これからの数十年はここが教育のキーワードになると思います。
近くこのブログでも取り上げたいのですが、
麒麟の田村さんの本を読んで芸人になりたいと心底思う子どもが出てきてもいい。
芸人の価値を本人が理解していれば立派な将来の夢です。
将来を選び取ることを恐れたり妥協してしまったりした私の世代が、
自分自身を変える作業をしていく中で、
子どもたちに伝えられることはもっとあるのだと感じています。
※ちなみに私は就職氷河期の最後の方にあたります。まだまだ若い!つもり。
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冒頭に子どもたちのことを悪く表現しましたが、
本当に生きづらさを感じているのは子どもたちかもしれません。
歳を経るにつれて何かをしなければいけないというプレッシャーがかかり、
でもやりたいことも特になくて、特別な経験や技能もなくて、
どうしていいかわからないのに社会から責められる。
孤独です。
親か学校の先生か友人か、誰かが手本を見せなければ苦しいことでしょう。
だからこそ、この本に出てくる取り組みをしている方々の行動には勇気づけられます。
いっぺんに社会を変えることは無理。
でも人はムードに適応する性質がありますから、
まずはコミュニティレベルで「正常な」社会を形成すること。
そして成功事例をエリアでシェアしていくことができればいいなと思っています。
────────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。

タイトル(0)−
うーん、0か1かで悩みましたが0です。
表紙には、「教育維新宣言ヨコハマ発熱!どうするんだ子供の教育」と書いてあります。
せっかく中身は良書なのに、従来の教育書を類推させるような、
お仕着せがましいタイトルになっています。
新刊で平積みのうちは教育に関心のある人が手に取りますが、
数ヶ月後に棚に差してあったら埋もれてしまうことでしょう。
本書には「横浜」・「中田市長」・「渡邉社長」と3枚も看板があるのだから、
これをタイトルに持ってこない手はないと思うのですが。

ナレッジ(4)★★★★
官僚言葉でもなく、教育論者言葉でもない表現で教育書が読めることは本当に救いです。
特に指導要領がどうあるべきかとか、ゆとり教育をどう総括するかというような
新聞に出ていそうなことではなく、
「俺たちならどうするか」を基点に現在の諸制度の問題点が語られているので、
教育行政に関心を持って来なかった人でも非常に読みやすくなっています。
教育改革を「実行」できる立場の人は残念ながらまだまだ多くありません。
市長らの取り組みを通してもっと多くの人が教育行政に携われる社会になることを望みます。
私も自分自身ができるレベルのことをしたいと考えています。

スキーム(1)★
対談形式はテーマ散漫になりがち、という落とし穴があることは前にも書きました。
本書が破綻していないのはパネラーのロジックがよく練られているからであり、
決して本の編集力によるものではないと思います。
文字の大きさは見やすく、しっかり小見出しも入っているのですが、
章ごとのテーマは見えず、パネラーの発言力に引っ張られている気がします。

総合(4)★★★★
上記の構成要素からするとかなり歪みがあるのですが、
本当に口ばっかりの教育論を抜け出すための輝きを放った良書です。
特に、私なら「行政から変えていく」という途方もない発想は持てないのですが、
そこにあえて切り込んでいく渡邉さんは役者が違うと思いました。
これまでテレビで見ていた激情家の印象とかなり変わりました。
全体としては横浜市が進める地域教育の取り組みを紹介するものであり、
私自身「地域から変えていく」点で同じ考えなので、
この数十年で何を子どもたちに残せるか、目下勉強中です。


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