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超・上層教育 (臼井宥文)
評価:
臼井 宥文
宝島社
¥ 1,470
(2007-12-13)
来年の大河ドラマに「直江兼続」が決定しました。
誰?っていう方。兼続です!!
主演が妻夫木くんじゃなかったら視聴率も落ち込むかもしれない知名度の低さあせあせ
実は私が一番好きな武将なので、
このニュースは超〜テンションが上がりました。

実は『武士の一分』の原作を書いている藤沢周平さんの作品の中に、
『密謀』という怪しげなタイトルの作品があり、
これがやはり直江兼続を主人公にした作品なのです。
※大河の原作は別の人が書いたもので、タイトルは「天地人」です。

この作品に出会ったのは大学生の時。
時代小説なんて「オヤジの読み物」くらいに思っていました。
きっとこのブログの読者層である皆さんもそうですよね。

逆に時代小説を読まない理由を考えてみました。
何か役に立つのか!?
‥あまり役に立ちません。
ケータイ小説が流行るのは、ドラマチックな恋愛体験が読めるから。
『おひとりさまの老後』が注目を集めるのは、老いに向けた準備が必要だから。
どちらも、ひょっとしたら自分も‥という可能性があります。

ところが時代小説となると、ひょっとしたら自分も‥はありません。
でも、『密謀』はちょっと違うんです。
内容的には、関が原前の上杉家の動向を書いた作品で、
前半は石田光成と直江兼続の人物描写を中心に展開します。

ひとつ前提を確認しておきますが、
この時代、新幹線がありません。ネットも携帯もありません。
どうやってお互いを知るのでしょうか。
そこで忍の登場です。彼らが大事な書簡を預かってやり取りします。

ですから、筆跡やそこに書かれてある情報量はめちゃめちゃ大事です。
顔も見えないし声も聞けないので、
それだけで相手に判断されてしまうのだから、書面命です。
昔の人が熱心に勉強をした理由がわかりそうな気がしませんか?
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時代小説を読んでいると、いかに知識・教養が身を助けるかよくわかります。
でも、「今の」「日本」にいると正直そこまで必要性を感じにくくなっています。

たとえば、メイド喫茶で働くメイドさん。
客商売をするにあたって漢字も計算も必要でしょうが、
漢文が読めたり微積分ができたりしても役に立ちません。
それよりかは、お客さんとどうコミュニケーションを取るか、
どんなレクリエーションで盛り上げるかを考える力があった方が100倍店に貢献できます。

良く言えば社会に色々な出口が拓けたことで、
勉強に肌が合わない人でも自分なりに生きていける環境があるのが今の日本です。
本書で著者が指摘する通り、
勉強よりも流行、家族よりも個人への関心が高い今の子どもたちの姿は、
優れたリーダーを創出する観点からはかなりマイナスです。

しかし、良くも悪くも多様な選択肢を持つ子どもたちが出したアンケート結果は、
とても正直に時勢を反映しているのではないでしょうか。
それくらいに「なぜ勉強をしなければいけないのか」にきちんと答えていくのは難しいです。
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■本書の構成
第1章:著者の娘が在籍した「ル・ロゼ」の教育&生活内容
第2章:ボーディングスクールの教育環境・卒業価値が大きい理由
第3章:世界各国の有名ボーディングスクール(イギリス・アメリカ・スイス)
第4章:世界のエリート競争に立ち遅れた日本の教育事情
第5章:ボーディングスクールに入学させる気構え
第6章:国内で注目のボーディングスクール&新進私立校
※ボーディングスクール=ハイエンド層向けの全寮制の学校
‥本書では単純に全寮制ではない旨解説されていますが、わかりやすくするためこの表現を使います。
────────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント

⇒71ページ【日本以上に厳しいアメリカの学歴社会】
要は世界と比べたら日本の学歴社会はぬるいということです。
大学教育を中心に以下のことが分析されています。
・アメリカでは大学院を出ることがステータスであり、給与にも大きく差がつくこと。
・日本では就職氷河期の受け皿として大学院が意味を持ったこともあり、就職・給与面で大学院生が冷遇されていること。
ワトソン・ワイアットの淡輪氏の寄稿によれば、
「米国では『新卒』という概念が存在せず、職種別採用が当たり前、
その道の専門家として自分が学んできたことに沿って就職する」ようです。
※『リクルートワークスVol.73』(リクルートワークス研究所)参照
日本にこの概念はあまりありません。もっと緩くて、文系か理系かくらい。
良く言えばやり直しがきく社会であり、
悪く言えば貢献対象を見つけられずに脱落者を生み出す社会でもあります。

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それでは5点満点での評価です。

タイトル(4)★★★★
タイトル自体は普通。(言葉の響きとして「情操教育」とかけているのでしょうかおはな
オビがすごく利いています。
「世界の富裕層がわが子に託すのは資産ではなく教育」
「いま富裕層のあいだではバイリンガル・バイメンタル・バイカルチュラルが必須条件」
カバーの折り返しにもしっかり、
「お金を失うことはあっても、知識と教養は奪われることがない」と入っており、
そのまま「はじめに」まで誘導されます。
パッケージとしては綺麗な展開です。

ナレッジ(4)★★★★
「教育が専門分野ではない」と言いつつ、かなり調べられてあります。
海外の学校、日本の学校、教育制度・文化の違い。
著者自身の視点だけでなく、
卒業生となった親へのインタビューや学校への取材を通して、
しっかりとした情報量で構成されています。

スキーム(4)★★★★
本書が優れているのは、著者の体験談を第1章にぐぐっと収め、
海外の有名校への取材はもちろん、
日本の大学教育の遅れ、国内の優良スクールについても触れていることです。
手が届くといっても海外に子どもを預けることができるのはごく一部の人の話。
夢のある話を味わった後で、しっかりと日本の教育についても触れているので、
特にボーディングスクールに興味がなくても読めます。
読者が知りたい情報を順を追って並べているところも見事。

総合(4)★★★★
次代の教育は外を見ていかなければだめだというのは、
本書に出てくる資料の数々を見ればわかります。
当然学生が学ぶ意欲を失っている現状はよくありません。
しかし、勉強が苦手な子に道を残さない社会が心地いいとは言えません。
日本の学力の評価制度は「まんべんなくやる」ことを前提としています。
教養は大事。でも人生観はもっと大事。
流行好きな子どもたちから新しい流行を生み出す子どもが育ってくれば、
本人も周りも幸せに生きられるはずです。
その意味では日本もまだまだ捨てたものじゃないと思います。
勉強に落ちこぼれても人生に落ちこぼれないために、
大人として色んな手本を見せてあげたいですよね。


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| 教育(公教育・教育サービス) | 04:05 | comments(0) | - |pookmark
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