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生命保険はだれのものか (ライフネット生命/出口治明)
 


「生命保険」と聞いて「面白そう」と思う人はまれです。
そもそも生保の本を取り上げている
このエントリーを見ていただいているだけで
皆さんだいぶ我慢強いか方かと拝見します(笑)。


何がそこまで生保を面白くさせていないのでしょうか?
若い人にこの傾向は顕著で、
リクナビ発表の調査では、人気企業TOP100のうち、
損保会社が3社登場している中で(損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上)、
生保は45位の日本生命1社のみです。
▼リクルート/大学生の就職志望企業『就職ブランド調査2008』
http://www.recruit.jp/library/job/H20080417/docfile.pdf#search='就職希望企業調査'


どれくらい異常かというと、
業界規模・企業数・CM投下量・身近に関わっている人の数を考えると、
大学生からの認知度は(少なくとも損保より)相当のものがあるはずです。
大学生が知っている企業数はたかが知れています。
中小はほとんど認知していません。
にも関わらずこうした結果が出ているということは、
たまたまというより「生保不人気」が顕著と言っていいでしょう。


先日、某国内大手生保の教育担当者の方とお話する機会がありました。
その会社では、2年でまるっと(営業)担当者が入れ替わるそうです。
契約のプレッシャーだけでなく、アフターフォローの煩雑さ、
クレーム対応などが重圧になり、辞めていくケースが多いとのこと。
「もっと続ければそのうち良さがわかってくるのに‥」
と嘆いていたことが印象的でした。


いまの若い人は"そのうち(良さがわかる)"を自分で判断しますから、
「頑張ろう!頑張れ!」ではきっと響かないでしょう。
もし自分が生保の業界関係者だったら悔しくないですか!???
自分ならこれはとても悔しいと思いました!!


個人的に生保の最大の課題は、
「担い手に(営業マンも顧客も)面白さを伝え切れていない」ことに尽きると考えています。


では、業界の人すら感じ取れない生保の"何が面白い"のかを、
この本と一緒に少し皆さんも考えてみませんか。

私の中途半端な熱い想いにより、いつもよりちょい長めでお届けしますが、
著者が起業したライフネット生命のサイト分析なんかにも
チャレンジしていくのでぜひお付き合いください。


──────────────────────────────────────
■本書の構成


★ 第1章:生命保険の問題点
★ 第2章:生命保険のビジネスモデル
★ 第3章:生命保険の種類
★ 第4章:生命保険の販売チャネル
  第5章:生命保険の規制
  第6章:生命保険の運用
  第7章:生命保険の世界事情
  第8章:生命保険の歴史
★ 第9章:消費者としての選び方


※ ★印は本書の魅力を理解するのに必読の箇所です。
  無印は周辺知識を得るための解説なので、特に必読とは思われません。
 (何せ興味がない方は、気合いを入れて読む必要があるテーマなので‥)

──────────────────────────────────────
■立ち読みのポイント


⇒64ページ【 生命保険の種類 】


なぜ生保が嫌われるか、という命題のひとつに、
「商品が複雑」ということが挙げられます。
そもそも契約時の内容って覚えていますか?
完璧に思い出せる人は少数だと思います。


それもこれも、特約・特約・特約‥で、
電話料金より難解な契約明細を見ても
「要はどんなときにいくら支払われるのか」がわかりづらいからです。


本書の当該ページでは、
要は生命保険とは基本3種類(死亡保険・生存保険・医療保険)で、
保険期間(定期と終身)との組み合わせなのだとわかります。


営業マンに聞けば「当たり前じゃないですか」という話になると思うのですが、
要はこんな単純な商品構造が、客からすれば言葉を変えられるだけで
わかりにくくなるわけです。


----------------------------------------------------------------------------
⇒15ページ【 なぜ保険商品はわかりづらいのか 】


私たちが通常想像する"保険やさん"は、どこどこ生命のだれそれさんです。
つまり、自社商品を販売する専属の営業マン/セールスレディーです。


著者が指摘する業界の問題点とは、
1社専属のセールスパーソン体制→比較情報が普及すると企業は困る
→複雑な商品を開発する(利幅が出る特約など)→消費者にとってわかりづらくなる
ということにあります。
著者が例に挙げる通り、家電や野菜のように
店やネットで気軽に情報を集めてくるのが難しい分野です。


商品がなぜ複雑化していったかについては、
88ページにも包括的にまとめられていますので、
併せて読んでみてください。


----------------------------------------------------------------------------
⇒186ページ【 生命保険の誤った選び方(保険料を目安にする) 】


私も読んでいて、「えっ、保険料を目安にしちゃいかんの?」と思いました。
損はしたくないので、平均値がこれくらいだから
これくらいにしとけば安全という心理が働きます。
あとは「月1万円くらいだったら」という考え方。


本書ではこれ以降の部分で、
1)保険の機能(死亡保障・生存保障・医療保障)
2)保険への依存度
3)ライフスステージ
以上3つに基づいて考えるべきと案内しています。


要は、最終的な判断として保険料の絶対額が
"高いか""安いか"のジャッジはあるものの、
何にどれくらい必要かを知らずして
それを決定することはできないということです。


この部分は選ぶ側にも問題はあって(というか思いっきし私)、
面倒くささが先行して、
営業マンが提示してくる「あなたに合った"お得プラン"」に乗ってしまうことです。


消費者として改めるべきは、
「損をしなたくない」という考え方です。
保険という商品の性質上、
「要がなくても掛け捨て」というマイナス心理が発生しますが、
そこを押し殺して、「人生設計を自分で選択する」ための「必要経費」として
認知し直す必要があります。


──────────────────────────────────────
■ライフネット生命について


エントリーの冒頭で、若い人ががしがし辞めていく
国内大手生保の話を紹介しました。


あらためて保険の営業の何が難しいのかを
契約面に焦点をあてて考えてみると、
0からの新規契約よりも、スイッチさせる方がかなり難しいことに気づきます。


既に人の関係が構築されている上に、
「損をしたくない」という顧客心理が大変に作用します。
これを切り崩すのは容易ではありません。



著者の出口治明さんは、
2008年5月、ライフネット生命を始動されています。


成功するには、
私なりに思いつくだけでも2つの大きな難点があります。

1)会社/商品のブランド力が無い
2)WEBという新型のチャネルが認知されていない


いずれも保険という商品が会社や人の信用力を背景に展開していることもあり、
後発で挑むのはけっこーきつい世界であることは言うまでもありません。


これはどのネット企業でも同じだと思いますが、
既存のチャネルからWEBへの転換を提示するときに、
既存のクライアントなりユーザーから必ず抵抗が起こります。


でも、現状をひっくり返せたらすごいですよね!?
しかもその予感を感じさせるのがライフネット生命のサイトのすごいところです。
では、実際にそのサイトの分析結果を見てみましょう。


▼ライフネット生命WEBサイト
http://www.lifenet-seimei.co.jp/


──────────────────────────────────────
■サイトの分析
※直接の書評には影響しないので、必要に応じて読み飛ばしてください〜。


とにかくすごい!このサイト。個人的に「フォートラベル」を見た時以来の感動です。
何がすごいって片っ端から見ていって欲しいのですが、
時間も無いのでここでは大きく2点ほどに絞って取り上げます。


1)ユーザーニーズの掘り起こし
ネットで生保を売る、そのターゲットは誰か?ということを考えた時に、
ネットに親しんでいる生保ライトユーザーという像が浮かんできます。
その人たちが必要としている情報は何か?
正に本書にあるような生保の基本情報です。
これに応えるべく3つの仕掛けが用意されています。


 ●刺さるキャッチコピー
 私自身が保険を見直すにあたり最大の障害が、「今までの掛け金を損するのではないか」
 ということでした。これをクリアするかどうかが大きなジャッジの分かれ目です。
 そうしたら、ちゃんと答えが用意されているんですね。
 トピックパス(サイト内の経路をページタイトルで追ったもの)で記すと、
 ホーム>知らなきゃ損の保険の仕組み>生命保険の見直し方
 『「途中で解約したら損」というのは思い込みです』の箇所。
 ここで、見直しにより節約も可能であると「メリット」が語られます。
 しかるべき場所にしかるべきコンテンツが用意されている、大事です。
 他にも、「生命保険の選び方」「生命保険の比較ポイント」といった見出しで
 徹底したユーザー目線のサイトを作り上げています。


 ●目からウロコの保険塾
 これはネット生保導入の必要性を、紙芝居形式で案内したコンテンツです。
 導入部では「面倒くさがらずに保険を選ぶ必要性」を説き、
 後半部では「ネットで生保を選ぶ」メリットを説いています。
 私たちが保険の営業を嫌がるのは、
 自社の保険商品について延々と語られることに対する
 "商品がよくわからない"という困惑と"時間を損した"という苛立ちの
 2つの大きなフラストレーションが自然と発生するからです。
 ライフネット生命は、既存の生保が得意とするマンパワーによる規模のメリットを、
 「本当は商品のことをよく知りたい」「自分のタイミングで考えたい」という
 ユーザーメリットに則り、ネットの特性で覆えそうという戦略を取っています。


 ●FAQ(よくある質問)
 未知なるネット生保なので、当然ユーザーからの質問も多く寄せられます。
 通常、BtoCサイトのFAQは"企業が想定するFAQ"であって、
 必ずしもユーザーが期待するFAQになっているわけではありません。
 しかしそこはライフネット生命、FAQもイケています。
 ページを見ると、日付・質問内容・アクセス数・お役立ち度の順で
 項目が並んでいます。
 そう、アクセス数・お役立ち度といった「ユーザー基準」が
 ここにも取り入れられています。
 さらに項目を、アクセス数・お役立ち度・掲載日毎に並び替え可能です。
 マーケティングの視点で見ると、
 アクセス数=重要度、お役立ち度=満足度ということになりますから、
 FAQを通して自社のマーケティングに役立て、ユーザーにも公開していく
 という姿勢が読み取れます。


2)導線とコンテンツの噛み合わせ
トップページにあるグローバルナビゲーション
(各主要コンテンツの大見出しのようなもの)を見ると、
ネットでユーザーをクロージングさせるまでの流れが
しっかりと組まれていることがわかります。
実際の並び順は少し異なりますが、想定されるユーザープロセスは、
以下のようになります。


「知らなきゃ損の保険の仕組み」(=生命保険の基礎知識)
 ↓どんな商品があるのか知りたくなる
「生命保険商品案内」(=商品ラインナップ)
 ↓実際の自分の現状が知りたくなる
「生命保険選びツール」(=シュミレーションツール)
 ↓自分の判断基準を確かめたくなる
「見積もり」(=契約・クロージング)


求人サイトや不動産賃貸サイトを見ていて思うのは、
特集だの、おすすめだの、今すぐ資料請求ボタンだの、
制作サイドの都合で作られている要素が多すぎることです。
ユーザーニーズが発生していない段階から
これらを表示させるから、使う側としては違和感を感じるのです。
(もちろんビジネス=営業の側面からは意味が大アリなのですが‥)


ライフネット生命のサイトは、
保険必要ですよね→こんな商品があります→これでシュミレーションできます
というように、ネット上での営業にまるで無駄がないのです。
というかむしろすべてユーザーにとって必要。


こうした導線とコンテンツの噛み合わせは、
ボヤっと他社サイトを眺めて作っているだけでは思いつかないので、
本当にすごいという他ない。


参考までに、経済評論家の山崎元さんも、
以下のサイトでライフネット生命のサイトについて評価しています。
専門家の視点もぜひ読んでみてください!


▼ダイヤモンド・オンライン 山崎元のマルチスコープ
『生保は金融ネットビジネスの「最後で最大のフロンティア」』
(サイトの評価自体は3〜4ページ目で言及)
http://diamond.jp/series/yamazaki/10031/


──────────────────────────────────────
■生保と営業の魅力


そろそろ冒頭の問いに対する回答をしないとですね。
すなわち、「生保の"何が面白い"のか」についてです。


それはずばり、「あらゆる無形サービスの基本になり得る」ことです。
生保を頑張って極めたら、無形サービスとして
最も難解かつハードな分野を制覇したことになります。


特に営業にパワーがかかる側面から、
マーケティングの4Pを強烈に意識する場面が多いため、
私のように事業企画として食っていきたい人や、
その他、トップセールスを目指したい人、起業したい人にとっては
この上ない"見返り"なのではないでしょうか。


生保を売っている人は本当に大変だと思いますが、
そこに確かな"夢"は存在すると思います。
他人事ですが(汗)、応援してます!!


(ちなみに)
だいぶ褒めちぎってきましたが、
私自身はライフネット生命に入っていません。本当です(笑)。


やはり保険は対面で買いたいのが心情で、
その分の付加保険料(保険会社にとっての手数料収入)が
上乗せされるとしても支払いたいと思えるからです。


この心情を持つユーザーをひっくり返していく(あるいは切り捨てる?)のだから、
ネット生保の方も大変だな〜と思います。


──────────────────────────────────────
それでは5点満点での評価です。


タイトル(5)★★★★★


生保についての本は腐るほどあります。
その中でなぜ本書を手に取ってみる気になったのか。
それはやはり、業界の問題点を
ビジネスモデル的な側面(販売チャネルや商品の利益構造)から
説き起こしたことに尽きます。
表紙にはシンプルすぎるタイトルの横に、
「業界の風雲児(が一刀両断)」とあり、これまた月並みな文句であるにも関わらず、
私たち消費者が知りたい情報があるのでは?、と期待させてくれます。
であれば、「生命保険はだれのものか」というシンプルすぎるタイトルは
これ以上でも以下でもないベストなタイトルだと言えます。


ナレッジ(5)★★★★★


人には"知る楽しみ"があり、生保においても同様です。
それを阻害してきたのは、一方通行な営業マンであり、
用語集に近い類書の存在です。
本書では、第1章で「なぜ私たちにとって保険商品はわかりづらいのか」
という消費者共通の疑問を解説するところから始めているので、
興味関心が高まったところで保険の種類(第3章)を学ぶことができます。
知的欲求を満たしつつ、
業界研究にも保険選びにも役立つ1冊です。


スキーム(5)★★★★★


主にナレッジ面から本書を評価してきましたが、
"語り口"も非常に巧みです。
ひとつは、まるでその場で対面しているかのような呼びかけの多用です。
 <例>「図表X‐Xを見てください」(主に第1章)
     「本書をここまで読んでこられた皆さんにとっては、生命保険はちっとも難しくないはずです」(189ページ)
もうひとつは、項目が複数あったときのまとめの言い換え。
 <例>「以上述べたように、自分に必要な生命保険を考えるときは〜(中略)
     の三つを考えてみると、自分の考え方がぐっとシンプルに整理されるのではないでしょうか」(192ページ)
こうした細やかさが、読者の頭を整理し、
大事なことを意識させる要素になっています。


総合(5)★★★★★


かなり好き勝手書き散らかしてきました。
途中、サイトの評価を交えたのでわかりづらくなってしまいましたが、
純粋に本の出来で★オール5です!!
著書としての完成度も高い(上記「ナレッジ」や「スキーム」参照)のですが、
何より企業としての戦略や出口さんのミッションがはっきりとしていることが、
そのまま本の読みやすさにつながっています。
保険のテキストとしても、本の書き方としても、(サイトのつくりも)、
掘れば掘るほどザクザク宝が出てくる良書です。

 

| ライフスタイル(衣食住・キャリアアップ) | 20:43 | comments(1) | - |pookmark
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Comment
管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2010/09/06 9:24 PM |
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